市井閑談
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)焉《いずくん》ぞ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)元旦|匆々《そうそう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ちびり/\と
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(一)[#「(一)」は縦中横] やまさん
昔銀座裏に「千代梅」といふおでん屋があつたころ、あそこは奇妙な人物が出入して不思議なところであつたが、桃中軒雲右衛門の妻君といふ婆さんなどと一緒に「やまさん」といふ二十二三の優男が居候してゐた。
「やまさん」は左団次の弟子で女形だつたさうだ。それであそこへ出入する芸者達がおやまの「やまさん」で、さう称んでゐたのである。時々「たいこもち」に出掛けたりした。
「やまさん」は変態であつた。僕はさういふことを知らないので、この店へくると「やまさん」を相手に酒をのむ。そのうち「やまさん」の挙動が妙なのでやうやく変態といふことが分り、それ以来いくぶん敬遠するやうになつた。
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