ッと前の方へ寄ってこい。チョウチンの火があるとグアイが悪いから、火を消すが、お前ら片手をだせ。めいめいの片手を握りあって、心を合せて相談しよう。こうしないと、死神や狐が間へはさまって立ち聞きされてしまう。いいか」平作は左手でお加久の片手をとり、右手で兵頭の片手をとった。
「お前らもめいめいの手をシッカリ握り合うのだ。まちがって死神や狐の手をつかまされないように、チョウチンの火のあるうちによーく改めて確めるがよい。火が消えてからは、どんなことがあっても手をはなしたり、握り変えたりしてはならぬ。ちょッとでも力をゆるめると、死神や狐の手にすりかえられてしまうから。いいか。シッカリ握ったな。それではチョウチンの火を消すぞ」
 平作は顔を押し当てるようにしてチョウチンの火を吹き消した。にわかに馬小屋はくらやみとなり、ローソクのシンに残った小さな赤い一点だけがチョロ/\している。
「さて、これでよい。それでは云うが、死神と狐の両手両足は不二男の首と腰に肉の中までくいこんでいるから、放すこともできないし、死神と狐だけ殺すということもできない。三位一体のようなものだ。不二男を助けるために、不二男の身体
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