ければならない。
 私は以上のようなことをゲームのルールとして探偵小説を読むものだから、この見方で最上級の作家と見られるのはアガサ・クリスチイ、次にヴァン・ダイン、次にクイーンというような順で、クリスチイは諸作概して全部フェアであり、ヴァン・ダインでは、「グリーン家」が頭抜けており、クイーンでは「Yの悲劇」が彼の作なら(江戸川氏からおうかがいした)これは探偵小説史の最高峰たる名作だ。その他では「観光船殺人事件」、古い物では「黄色の部屋」や「ルコック探偵」などは忘れ難いものだろう。
 私は目下横溝氏の「獄門島」を愛読しているが、我々読者の休養のひとときに愉しいゲームを与えてくれる名作の続々たる登場を希望してやまない。
 私自身もそのうち一つだけ探偵小説を書くつもりで、その節は大いに愛好者諸氏とゲームを戦わすつもりである。戦争中考えていたので、八人も人が死ぬので、長くなるので却々時間がなくて書きだす機会がない。そして私はあいにくこの一つだけしかゲームの種を持ち合していない。その節は私の方から読者に賞品を賭けましょう。



底本:「坂口安吾選集 第八巻小説8」講談社
   1982(昭和5
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