私は女の店の酒を平然と飲み倒した。あまたの友人をつれこんで、乱酔した。嵐であった。平和な家を土足で掻きまわしているような苦しさを、つとめて忘れて、私は日ごとに荒れはてた。
私は下宿へ女を一歩も寄せつけなかったが、時々女の店へ泊った。店の二階は一間しかない。女も女給たちも、五六人がそこへゴチャゴチャ入りみだれて眠る。私の泊る部屋も、そこしかなかった。私は平然と、女とたわむれる。女給たちは、ねたフリをしている。白々と明ける部屋に、ふと目がさめると、女給たちの大きな尻があらわに入りみだれている。あの女給たちは、ズロースをぬいで、ねむるのである。彼女らは、あの男、この男と、代りばんこに泊り歩いて、店へ戻ると、ダタイの妙薬と称する液汁をのみ、ゲーゲー吐いているのであった。
金のある時は、いつも、よそで遊んでいた。その遊び先で、二人の珍妙な友人ができて、彼らは時々私の下宿へ遊びにきた。
一人は通称「三平」とよぶ銀座の似顔絵描きであった。三平はアルコール中毒で、酒がきれると、ぶる/\ふるえ、いそいでコップ酒をひッかけてくる。時々私と腰をすえて飲みだすと、さのみ私の酔わぬうちに泥酔して、アヤツリ
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