物は在り得ない。小説の実在性といふものには、それだけの絶対性があるのである。
 小説の技法などゝいふものは、言ひ現はし難いもので、自ら会得する以外に仕方がない。小説家は、常に小説の中で全てを語りつくすべきもので、僕が今、講談に就て語つたことも、意をつくしてはゐないし、又、つくさうとも思つてゐない。たゞ、講談の口調をやゝとりいれて小説を書いてゐるのは本当だが、講談といふものを特別意識してゐるわけでもないのである。たゞ、講談といふ言葉を一つとりあげたから、こんな風な文章になつたゞけの話である。この小説は、もう三ヶ月ぐらゐで出来上ります。



底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
   1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「現代文学 第六巻第三号」大観堂
   1943(昭和18)年2月28日発行
初出:「現代文学 第六巻第三号」大観堂
   1943(昭和18)年2月28日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2008年9月16日作成
青空文庫作成
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