ないが、サルトルを酔いつぶす目標だけは教えられて知っている。
団子山がダイコンおろしで白い物をすっていたが、なめてみて、
「アッ、いけねえ。ベッ、ベッ、ベッ」
「アラ、どうしたの」
「どうもこうもあるもんか。こんな小便くさい催眠薬があるもんか」
「これ、催眠薬なの」
「アドルムてんだよ。ちかごろ文士が中毒を起していやがる奴よ。よッぽどヒデエ薬らしいが、こんなクサイ薬をのむとは文士てえ奴は物の味のわからねえ野郎どもだ。これじゃアカクテルへ入れて飲ませたって、わかっちまわア。ほかの催眠薬を買ってきなよ」
と、薬屋へ駈けつけるやら、楽屋裏では上を下への騒ぎをしている。
ところがサルトル氏、ジン、よしきた。アブサン、OK。左右からひきもきらず差しつけるグラスを一つあまさずニコヤカにひきうける。乾杯。ハイ、よろし。渋滞したことがない。それでいて、いさゝかも酔わない。
悠々山の如く、川の如く、ひしめく敵方の男女十余名にとりまかれ攻めたてられて、ニコヤカにして礼を失せず、冷静にして爽やかな応答、ウィット、たくまず、また程のよさ。
天草商事名うての智将連も、彼の前では格の違った小才子にしか見
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