。雄大にして百万の労力がこもっとる。石川組は平和のシンボルをつくることを使命とするぞ。心身ともに筋金の通らん奴は平和日本の害虫であるぞ」
「エエ、適材適所と申しまして、害虫も使いようでざんす」
 とサルトルがとりなした。
「アタシが使いこなしまして、石川組の人間に仕立てやすから、今後よろしゅうおたのみします。雲さんや。社長があゝ云って下さるのも、オヌシに目をかけて下さるからだよ。お礼を申しあげて、仕事に精をだしな」
 そこで才蔵は長範から盃をいたゞいて石川組の人間ということになった。
「ではアタシは才蔵をつれて天草商事へ行ってきやす。ちょッと自動車をお借り致しやす」
 と、二人は社長の車で東京をさして出発した。

   その九 サルトル雄弁をふるうこと

 天草商事の社長室へ通される。チンピラ重役三人組の前へすゝみでたサルトルは、まずニコヤカにモミ手をしながら、
「エエ、昨日はたいへん失礼。本日はまた、うるわしいゴキゲンで何よりでざんす。つきましては、一言お詫びを申上げなければなりませんが、実は、雲さんを無断でお借り致しました一件で。これにつきましては深い事情もありますが、おいおいと話
前へ 次へ
全158ページ中78ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング