そうにちがいない」
「いいえ、そんな」
「イヤ、ツル子さん。わかっています。あなたは、たしかに、心の正しいお方だ。お世話になって、すみませんでした」
厚く礼をのべると、菊松は、又、昏々としばらく眠った。
それから、一ヵ月、菊松は退院した。
又、一ヵ月。菊松は転地静養から、まったく元気をとりもどして、はれて出社した。
社長のサルトルは時々病院へ見舞ってくれたから、とっくに顔ナジミだ。ところが意外な人物が、ニヤニヤしながら、近づいてきた。
「正宗さん、ボク、覚えてますか」
どうして、その顔を忘れよう。白河半平であった。
半平は人の思いは気にかけない。いつもただ、ニコニコ主義である。
「アッハッハ。ボク、白河半平。ね。ホラ、知らぬ頼の半兵衛ですよ。天草商事がつぶれちゃったんで、サルトルさんに拾ってもらいましたよ。とにかく、腕に覚えがありますからね。相変らず、編輯長ですよ。今度は重役じゃ、ありませんけどね。アハハハ。しかし、ボクの行く道たるや、恨みなく、怒りなし。常に、ただ、ニコヤカ、和合をモットーとしています。もっとも、ボクが人に恨まれ、人に怒られる不行跡は数々犯していますがね。
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