たしかに、なにかが、全快したに相違ない。
「そうですか。どうも、ボクには、よく分らないが、巷談社の社長の方は、天草商事の方ですかな」
「イイエ。サルトル・サスケさん」
「サルトル・サスケ? 雲隠才蔵とちがいますか」
「イイエ。天草商事に関係のない方です」
菊松の記憶にはないワケだ。サルトルに会った時は、もう狂って、マニ教の座敷牢にいたのだから。
「その方が、どうしてボクを重役にして下さったのでしょう?」
ツル子は真ッ赤になってうつむいたが、ようやく、気をとり直した。
「サルトルさんは、私のフィアンセです」
「ツル子さんも、巷談社の重役ですのよ。あなたが専務。こちらが常務。ワケは、いずれ、ゆっくり話しますから、一度アリガトウ、と仰有い。今日があなたの新しい人生よ。そして、すこし、休みましょう。全快はしても、催眠薬の影響で、身体が衰弱しているから、それが恢復するまでに、あと一ヵ月ぐらい静養しなければならないのよ」
「そうか。そうか。心配をかけて、すまなかった。そう云えばわかったような気がする。ボクが愚かで、意気地なしだから、いろいろ御迷惑をかけお世話になったに、きまっている。たしかに、
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