正宗菊松神様となること

 サルトル、才蔵、ツル子の三名は箱根へついた。
 サルトルは石川長範に報告して、
「イヤ、どうも。敵もさるもの。一筋縄では手に負えぬ曲者です。アタクシも社長に広言をはいた手前がありますから、かくなる上は討死の覚悟で一戦を交えることに致します。いさゝか戦闘は長びきますが、当分の間、アタクシをこの仕事に専念させていたゞきたいので、一向に華々しい戦果もあげえず、ムダに時間のみ費して恐縮ですが、アタクシも後へひくわけには参りません。戦果なき時は、いさぎよく責任をとりますから、ここはアタクシに一任していたゞきたく存じます」
「よろしい。キサマを見込んで一任するが、立派にやってみい。オレは東京へひきあげるから、後はまかせる。しかしキサマ、すごい美形をつれてきたそうだな」
「ハア。あれなる美形は敵の間者で」
「間者?」
「シッ。声が高い。アタクシの眼力に狂いはありません。敵の策にのると見せて、当地へつれて参りましたが、間者というものは、これを見破っている限り、これぐらい調法な通信機関はありませんな。こちらで、こう敵方へ知らせたいと思うことを、ちゃんと敵方へ報告してくれます
前へ 次へ
全158ページ中107ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング