言うことマジメにきいてちょうだい。そのかわり、私も本当のことを言いますわ」
ツル子の顔から血の気がひいてしまった。まんざらジンのせいだけではないらしい。小娘にはスパイはつとまらない。
ツル子の気魄はリンリンとたかまり、するどくサルトルを見つめて、
「私をたゞの接待係と思ったら、大マチガイよ。こんな広い邸内に、ただ一人、酔っ払いのソバに坐ってる接待係なんて、いやしないわ。わかったでしょう、サルトルさん。私、スパイなんです。本当にあなたが阿片もってらっしゃるかどうか、それを突きとめる使命をおびたスパイです」
一気に告白してしまった。タヨリないスパイがあったもの。
サルトルもこれにはドギモをぬかれた。アプレゲールの病状の一つに、自虐趣味、露悪症、告白狂等々、一連の中毒症状があるのである。
サルトルに限って自虐趣味もないし、カストリ趣味もない。職業野球やタカラクジに亢奮する趣味もない。まことに無趣味な男で、アプレゲールの右翼である。
特攻隊的暴露症には縁がないから、その凄みにはタジタジ。
「スパイとおっしゃると、つまり、間者《かんじゃ》ですな」
などと、てれかくしに古風な言葉に英
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