たきシアワセに存じあげます。御遷座の上は、ワタクシも東京におりまするから、御用の折は遠慮なく申しつけて下さいますよう。フツツカながら、犬馬の労をいといません」
「ウム。信徒に非ずとはいえ、お前の志のよいところは神意にかのうている。時々遊びにくるがよい」
「ハハッ。ありがたきシアワセに存じ上げ奉ります」
と、サルトルは目的を達し、正宗菊松をつれだして、東京へ帰ることができた。
一方、天草次郎によびよせられた在京の幹部連中、痩せさらばえて額面蒼白、目玉に妖光を放つ社長から神示をうけ、東京へとって返して、数台のトラックを苦面する。
このトラックに幔幕をはり、神具はじめ家財一切つめこみ、信徒が分乗し、合唱奏楽高らかに東海道を走って、東京へのりこむ。
天草商事へ横づけにすると、直ちに社長室を神殿にかざりなして、奏楽合唱礼拝をはじめる。
社員一同を廊下にひれ伏させて、事業一切神の手にうつった旨を申しきかせ、社員は同時に信徒たり、下僕たる旨をも申し渡す。
ズラリとひれ伏した社員の頭上を幣束《へいそく》が風を切って走り、ミコの鈴が駈け去り駈け寄り、合唱がねり歩く。
三羽烏、いずれも蒼ざめはてて、目のみ光り、狂人以上にただならぬ様子だから、社員もゾッとした。
「なア、オイ。ウチの社長のような、ガッチリズムの冷血動物がマニ教になったかねえ。わが社をそッくり奉納したには困ったな。我々は神の下僕だとよ」
「笑ってちゃ、いけないよ。神の下僕、信徒ときたからには、月給は払わないぜ」
「なるほど」
「雲隠の奴に百万円だまされて、キミもたしか、貯金をおろしたようだが」
「ワッ。いけねえ。オイ、ふざけるな。かえせ」
「オレに返せたって、ムリだよ」
「ウーム」
一同、目を白黒させている。
とっぷり日の暮れるまで、社員はマニ妙光の合唱をやらされる。夜になると、一族郎党、神様をまもって、再びトラックに分乗し、神殿に定められた寮へ落ちつく。三羽烏もここへ泊められて、自宅へ帰してもらえない。
その翌日から、各新聞の賑やかなこと。妙光様と天草商事で持ちきりだ。そのくせ、マニ教の神殿は、信徒以外に侵入を許さないから、借金とりの苦心も実を結ばない。
こうして神様の陰にかくれて、天草次郎はユックリと起死回生の策をあみだすツモリであったが、碁や相撲のように個人の天分だけで復活できる世界とちがって、
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