や理念だけでは、人間は窮すると中世になる。この逆転を支えるだけの実力がない。
共産党は元々カミシモを持たないから、卒直単純に中世で、共産党の組合の指導寸法というものは、一方的に座の利益を主張するものだから、やっぱり隣組のタバコ座やラク町のパンパン座と本質に於て変りはない。
私は中世は好きではない。隣組のタバコ座は好きではないのだ。私がかのオバサン座に常に惨敗のウキメをみたヒガミではないのである。
然し、窮すれば、中世になる。この転落を防ぐ真に実力ある方法は、目下のところ、モラルや理論ではどうにもならず、窮しなければ中世にならない。それ以外には外に方法もないように見える。
窮すれば中世になるということは、察しなければならないということで、だから目下、ヤミ屋は中世ではなく、常にブルジョアには中世の精神は分らない。不思議にも、ブルジョアならぬ私、常に窮していた私が、尚かつ平和時代に於ては中世の精神をさとるに至らなかったとは、まことに意外千万だ。
私は然し、常に窮しながら、あえて中世に節を屈しなかった私の方に、いくらか取柄があるのだと考える。
一方的に自分の利益だけを主張する、とい
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