リだけで申渡すんぢや片手落だな。よろしい、ここはかうしよう。金談の方は、これはもう、借りた金は払ふべきものなんで、序論も結論もいらない当然な話だから、こちらの方は相当無理な稼ぎもして、闇屋もおやりの由《よし》承つてゐるから、よろしく稼いで、こゝはあなたの男の意地ですよ、女の問題がはさまつてるなら、金の方はサッパリしたところを見せなきや。それぢや、この話はこれで終つた。次に、最上先生、そこへいきなり附録みたいに女をつけたして言つちまふのは無理だなア。ともかく今拾つてきた女ぢやない、女房なんだから」
「女はみんな女さ。この女が出て行きたい、この人と一緒になると言ふんだ」
「さうは言つても、それが全部ぢやない。金談とは違ふです。男女の道に於ては、一つの問ひに答へる言葉が常に百通りもあるもんですよ。それぐれえのことは、私が言ふことぢやなくて、あなたの専売特許みてえなもんぢやないか。やつぱり事、女房となると、あなたのやうな大学者でも、子供みたいに駄々をこねるんだな。精神も物質です。これより我々は、私はでゝ行きます、といふ物質がちやうどまア石炭みたいに、胸の中のどういふ地層で外のどんな物質と一緒に
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