買つて売れば、もうかる。けれども買ふお金がない、その一つが紙なんだな。紙はある。どこにもある。これを買つて本にして売れば、もうかる。けれども紙を買ふお金が出版屋の金庫になくなつたといふから、深刻であるですよ。この時あなた、こゝに大資本を下してごらんなさい。先づ紙を買ふ。現品で紙を持つてる本屋なんぞは、もう日本にはないんだからな。次に漱石でも西田哲学でも何でも買ふ。買へますとも。金さへ有りや、何でもできる。さういふ時世なんだから、そしてあなた、こんな時世といふものは今まで一度だつて有つたためしがないんだから、話はそこのところなんだな。伝統も権威も看板もシニセもありやしない。みんなお金でヒックリかへる時世なんだから、それをヒックリかへさなきや、この着眼の問題なんだな。闇屋さんなんぞは、もうあなた、ありきたりのものですよ。三井、三菱、くさつても鯛、一時はヒッソクしても潜勢力、横綱のカンロク怖るべし、なんて、そんなあなた、きめてしまつちやいけないなあ。闇屋さんなんぞは新円景気、自ら時代の王者でありながら、内心は、三井三菱、今に必ず盛り返す、なんて御本人がさう考へてゐらつしやるのだから、お里が知
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