、さういふ世界ぢやないですな。たとへば、あなたのこの手相でも、手相自身が語つてゐる、私はそれを人間的に読む、ですから、いけない。然しですな、私が見ても、この手相はよろしくないです。ツギ木に花がさいてる。季節ぢやなしに、狂ひ咲きです。あなたは、とんでもないことをしてますね。それは小さな無理です。然し、結局とんでもないことだ。さうなるのです。あなたは何か、たとへば、こんな、たとへばですよ、こんな風な無理をしたことはありませんか。たとへば十円の料金の何かゞある。あなたはそれに二十円払つて、まアとつときな、と言ふ。とんでもない無理だ。それに、あなた、こゝに一つ生長の反対、消えつゝある線がある。智能線の分脈したもので、つまり知性に当る線です。あなたは没落してゐるのです。あなたは学問を信用しちやいけませんよ。学問なんか、手の線に現れやしません。手の線に現れるのは、五円もうけるところを十円もうける人、十五円もうける人、さういふ智能が現れる。あなたの智能は、だんだん消えてゐる。いゝですか。あなたは今、どんどんお金がもうかつてゐるかも知れません。然しですよ、お金をもうける智能は消え衰へてゐる、こんな手相
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