のメーンストリートが道路でなくて祭礼の会場となる。
一丁目から六丁目まで、各丁目ごとに道路の幅の半分を占める屋台をすえて、まためいめいのミコシをすえる神殿を造って鳥居を立てる。鳥居から神殿まではトラックが砂をはこんできて四、五間がとこ敷きつめる。道の幅半分を占領してメーンストリートにこれができるばかりでなく、各丁目それぞれ手前の都合があって、道の右側に屋台と神社をつくるもの、左側につくるもの、入り乱れていて全然道の用をなさなくなってしまう。
桐生の警察の交通整理ぐらい根気がよくてコマメなところはめったにない。人は右、車は左、これを破るとかならずお巡りさんに注意されるから、東京からくる人はかならずこれをやられて、
「桐生の町を歩くのはユダンができねえや」
とシャッポをぬぐ例になっている。これほど交通整理に熱狂的な執念をもっている桐生警察もギオン祭には歯が立たないのである。それも仕方がない。祭の期間中、メーンストリートは道路でなくて会場だからだ。昼は行列とミコシのねり歩く会場であるし、夜は芝居や音楽や踊の会場だ。自動車はおろか自転車も通れない。
おのおのの屋台でやるカブキ芝居は日没
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