ンカツ屋のオカミサンは僕が毎晩酒を飲むのだといふことをきいても決して信用しない始末であり、青年団の模範青年は、ある日僕が金に困つてどうしても質屋へ行く必要があり、その案内を頼んだところ、蟇口をもつて追つかけて来て、無理矢理二十円押しつけて行く始末であつた。まつたく不思議な話である。どうしてこんな信頼を博したかといふと、総理大臣の気焔に身を切られる思ひで、くさり果てゝゐたからであつた。

 教訓。傍若無人に気焔をあげるべきである。間違つても聖人などゝよばれては金輪際仕事はできぬ。



底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
   1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「日本学芸新聞 第一三八号」
   1942(昭和17)年9月18日
初出:「日本学芸新聞 第一三八号」
   1942(昭和17)年9月18日
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2008年9月16日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランテ
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