、一向に親身の心配をしなかった。
「なに人間は似たものさ。特に幸福な人間も、特に不幸な人間も、いるものか。境遇なんざ、どう変っていたって、根は同じことだよ。ほッとくのが、いちばん、いいのだ。しかし、本当に、ほッとく奴が、いないだけのことなのさ」
十
「本当にほッとくなんてことが、できるものかね」
青木がいささか色をなして長平の無責任な放言を問いつめると、長平は笑って、
「そりゃア、できないな。しかし、大まかに、要点をつかんで、やるのだね。家出本能のようなものもあれば、帰巣本能のようなものもあるんだね。飛びだす方をほッとく以上は、戻ってくるのも自由にほッとく必要があるだろう。要は、それだけだね。何べん飛びだして、何べん戻ってきたって、かまわねえや。それで人間が不幸だってことは、ありゃしねえな。人間は、それ以上に幸福ではあり得ないものなんだね」
至極要領をつくしている。一人の男を選んで与えて、それで片づけてしまうのに比べると、この方が理にかなってはいる。この方が本質的に、あたたかい方法ではある。帰る家があるというのは一生の救いかも知れない。二度と帰らぬ覚悟で嫁ぐという
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