んて、卑しいわ。グズグズしないで、旅館へ案内しては、どう?」
「そうガミガミ云うことはないですよ。さッそく支度をしますけどね。人にはガミガミお金にはピイピイ、あわれなる宿命だね。しかし、あなた、社長邸をとびだして、旅館へ泊って、いかがなさるのですか」
「うるさい!」
記代子はカンシャク玉をハレツさせて、一喝した。妙齢の女子が、かりそめにも男子に一喝をくらわせるとは、由々しいことである。女中や下男に向ってそんなことをするかも知れないが、同輩に対する習慣にはないことである。
しかし、青木は怒らなかった。むしろ記代子をあわれと思った。その墓碑銘に「多難なる生涯を終りたる娘」と書くに価する悲しい人生を経てきた娘が数多くいるはずのものではない。記代子などは例外だった。
「カンシャクを起したくもなるだろうさ」
青木は深い愛情をもって記代子を見ていた。それは同族に対するあわれみの念でもある。記代子のようなアワレな娘には、踏んだり蹴ったりされても、トコトンまでイタワリを果すユトリを彼は身につけていたのである。
「さ。では、旅館へ御案内いたしましょう」
「あなたが泊るのではありません。案内したら
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