ういう間の悪るさのせいもある。
「男の方が利巧らしい」
 せつ子は苦笑した。吾関せずの長平が、憎らしいが、なつかしまれる。彼の冷淡さに理があるように思われるからであった。
「あんなことを言って、子供だましのようなお世辞なんか使ったって、だまされやしないわ。まるで悪るがしこい狐のよう」
 記代子の鋭鋒はくじけなかった。記代子はすでに覚悟がついてしまっていた。否、家出後の暫時の目鼻がほぼリンカクをなしていたのである。せつ子は程を見はからいすぎて、時を失したのである。
 せつ子の訪れは、却って落付きと、かたい決意を与えたようであった。まだ九時ちょッとすぎたばかりだ。記代子は人々の気配に耳をすまして、せつ子の家から忍びでた。

       四

 社がひけてから、二三ヒマをつぶして、青木はゆっくり宿へ戻ってきた。すると、一足おくれて訪ねてきたのが記代子であった。
 記代子は彼に笑顔すら見せなかった。突ッ立ったまま、
「ここにはいられないのよ。てもなく発見されてしまうわ。どこか、社の人たちに気づかれない旅館へ案内して」
 頭上から噛みつくようにイライラと命令する。
「慌てることはないでしょう。
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