りかかった。子女の家出に熟慮断行などということは、めったにない。激情的であるから、当人は一時的に悲愴であるが、同時に冷静でもある。時間を失せず、今のうちに飛びださなければ、ということを充分に知りすぎているのである。今でなければ、家出の理由がないし、大義名分がない。今を失すると、再び踏み切るときがないかも知れない。平静の時には自信がないことを知っており、激情にまかせなければ実行不可能であることを知っているのである。
それは家に甘えているせいではない。誰しも家をでれば、寄るべないのは当り前のことである。
記代子は二度目のことであるから、なれているようであるが、こういうことは馴れるというものではないようである。必需品はなんであるか、それぐらいのことには気がつくが、特にこの際に必要な、そこまで冷静な計算ができない。血迷ってもいるし、先の目算がたたないせいもある。
夜の家出というものはグアイがわるい。夜中トランクをぶらさげてブラ/\しているのは都合のわるいことが多いものだ。翌日せつ子の出勤をまって、ゆっくり脱出した方が万事によろしいけれどもそれまで待っている余裕が怖しかった。そこで記代子は
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