い。
しかし、そのアベコベも真実であることを放二は知っていた。人間は、お金で買えるものなのだ。身体も、心も。特殊な例をあげる必要はない。早いところ、勤め人の生態がそうではないか。
だいたい、人の心を買うものが、こっちの誠意や赤心だという考えがまちがっている。誠意や赤心というアイマイなものは、売買の規準にはならないものだ。一歩まちがえば、神がかり的な軍人たちや、教祖と信徒のようなものになってしまうし、まちがわなくとも、それがギリギリの正体なのかも知れないのである。
むしろ、精神的なものも、金で買うという方法が、マギレがなくて、元々チグハグな人生では、ともかく最も正常な方法なのかも知れない。人の心というものがトコトンまで買いきれないのは分りきったことであるが、一応物質に換算して、ある限界までは金銭で売買するのが、むしろ健全だ。それ以外により明確な手がないからだ。
しかし、放二は、十万円でエンゼル夫妻の信頼を買うつもりではなかった。彼はその考え方を捨てたのである。何も買ってはいけない。彼はただ二人のために誠意をつくそう、と自分に言いきかせていたのであった。
そのつもりで、彼らに渡す
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