することは、あるいは最も邪悪の念の一つであるかも知れない。
エンゼルを疑ぐる必要はないのである。自分の一生を通じて、記代子とエンゼルのためにマゴコロをつくせば足るのであると放二は思った。
「記代子さんはどうしていらッしゃいますか。一目御挨拶いたしたいのですが」
「そうですね。ちょッとカゼをひいてねていますが、様子をきいて参りましょう」
ウスノロがすすんでカモになりたがっている様子だから、二度と記代子に会わせないつもりであったが、ワガママを言っているわけにいかない。にわかに記代子にムネをふくめて、今度彼女の店をだすについて十万円かしてくれと頼んであるから、お前からもよろしく頼むがよい、と、つれてきた。
しかし記代子は放二にたのむ気持はないから、ツッケンドンに、放二を見下して、
「私、あなたから、お金かりようなんて思わないのよ。どうせ梶さんのお金ひきだしてくるのでしょう。汚らわしいわ。ですが、エンゼルに貸すんでしたら、貸してあげなさい。きッとよ。貸しますね」
放二は赧《あか》らんでうなずいた。
「ぼくは、ただ、お役に立ってうれしいと思っているだけです」
「誰のお役にですか。エンゼル
前へ
次へ
全397ページ中279ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング