が野中さんに対して偽る気持をもたないこと、野中さん御夫妻へのぼくの偽りない友情を信頼していただきたかったからです。かりに、ぼくの周囲の方々が、お二方のお気にさわる態度を示す場合にも、ぼくの友情は信じていただきたいと思ったからです」
 エンゼルは苦笑した。この男を買いかぶっていたようだ。酔っ払ってもいたし、パンパンアパートの雰囲気が一風変って異様でもあるから、買いかぶってしまったが、この男の底が知れてみると、あの雰囲気も別に異様ではないようだ。つまり一番グズな人間どもが、グズ同志よりあつまって、センチなママゴトみたいなことをしているのだろう。記代子はバカそのものであるが、この男はそれに輪をかけたウスノロかも知れない。
 エンゼルは大庭長平について、計算ちがいをしていた。記代子はニンシンしているし、知名人の姪であり、愚連隊と結婚させるはずはない。取り戻しにきて、なんとか挨拶があるだろうと期しているから、なんの取柄もないバカ娘をおだてあげて、本宅に鎮座させ、女房然とつけあがらせておくのである。
 放二の伝えるところによると、大庭長平は全然平静で、好いた同志なら何者と一しょになってもかまわない
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