な才覚もなければ、鵞鳥の半分ぐらいの早さで逃げる体力もなかった。
三人のアンチャンが彼の目の前を素通りした。隣室でガタガタ何かやっていたが、また、素通りして姿を消した。彼が返事をうけたのは、ようやく、その後であった。
彼は、さっき四人がガタガタやった隣室へ招じられた。大きな丸テーブルに四ツの肱掛イスという応接間だが、造りは和風で、格子戸がはまっている。
「ちょッと、待って、チョーダイナア」
アンチャンは変テコな女の声色で、目の玉をギロリとむいて笑いながらひッこんだ。
入れ代って、無造作に現れたのは、色のまッしろな好男子である。ギリシャ型の鼻筋が通り、目は深く、すんでいる。水もしたたるような、西洋型の明るい美貌で、どこにも凄味というものがない。ただ肩幅ひろく、胸は厚く張り、腕は逞しく隆々としていた。年は二十四五であろう。
「ぼくが野中です。どうぞ、お楽に」
と、気楽に言ってイスにかけたが、その顔は明るい。青木のなぐられたのも好男子の愚連隊だというが、この男たは、そんなことをしそうな風が見うけられなかった。
「あなたは、どこの戦地へいらしたのですか」
エンゼルは、卓上のタバコを
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