去も現在も、誰にも知らせたくなかったのである。
 どうしても、彼自身の手で、記代子を元の位置へ置き戻さなければ、と、思った。
 しかし、そのとき、ルミ子がこう言った。
「記代子さんを探しだしてあげるのが、その方に親切なことでしょうか?」
 ルミ子は思い惑っていた。

       八

「エンゼルに手下が多いたって、監禁してやしないでしょう。監禁されているにしても、逃げられないことないはずだわ。ポッとでの田舎娘じゃないもの。都会のオフィスで働く女性だものね」
 ルミ子は表現の言葉を選ぶのに苦しんだ。
 記代子をバカな女だと思うけれども、自分や自分の周囲の女と同じようにバカなだけだ。彼女らがこんな暮しをしているのも、バカのせい。それを悔いてもいないし、世間体よく暮す人を羨んでもいないが、記代子をハッキリとパンパンなみだと言いきって、寝ざめが良くもない。
「その気持があれば逃げだせるのに、逃げないとしたら。……世間で思うのと、当人が思うのと、ちがうんじゃないかなア。泥沼から助けられて、迷惑する人もいないかなア。泥沼なんて、心境の問題だ。お金をウントコサもって鬼のように生きている人もいるし、
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