青木は酔っていたので、むしろ興にかられた。
「さすがに、あなたは、ぼくの考えた通りの人さ。そのトンチンカンなところがね。ほかの観音様は、みんなツジツマが合ってらア。神秘的というものはタカの知れたものさ。あなたは神秘じゃないんだな。要するに南洋と日本の言語風習の差あるのみ。ねえ。あなた。我々はその差に於て交りを深めましょう」
 青木は腕をつかまれた。そして、ひき起こされた。身ナリのよいアンちゃんであった。
「勘定を払えよ。そして、出ろ。いくらだい。このオトッチャンは」
 二千円であった。青木の蟇口《がまぐち》には、千八百円と小銭があるだけであった。アンちゃんは千八百円を女に渡した。
「二百円、まけてやってよ。仕方がねえや。おい。出ろ。足りないところは、カンベンしてくれるとよ」
「ヤ、アンちゃん。コンバンハ。しかしお前さんが出ることはなかろうぜ。ねえ、アンちゃんや。ぼくの話し相手はジャカルタの観音様さ」
 アンちゃんは、もはや物を言わなかった。彼の片腕をかかえて、グイグイつれだした。露路をまがると、ちょッとした暗闇の空地があった。男の腕がとけたと思うと、往復ビンタを五ツ六ツくらった。と、顔
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