十二

 礼子の観察は当っているかも知れない、と放二は思った。自分の経験にてらして、マーケットのカストリ屋で男たちにとりまかれている時の記代子は、酔漢にからかわれるのも愉しそうであったし、酔漢にジロジロ見られても、心ゆたかであったようだ。カストリ屋の主婦や女給と語らうことも、けっしてキライではなかったのである。
 しかし、記代子の新たな境遇、ニンシンと孤独、小娘の身にあまる煩悶の日々を思いやると、心境の激変も当然なければならないし、たのしいこと、明るく賑やかなことには、ついて行けなくなっていたかも知れない。虚無にもなろう。軽蔑もしたかろう。
 しかし、そのへんのことは、放二にはシカと見当はつけがたかった。
「すると、記代子さんは、皆さんとお友だちになりたくて、遊びに行かれたのでしょうか」
「お友だちになりたいッてわけではないでしょうけど、男のお客さん方のように、バカ騒ぎしたいような気持――女ですから、バカ騒ぎはないでしょうけど、小説などにありますでしょう。気持のふさいだ時や、失恋だの、悩みだのというときに、バーでヤケ酒のむなんてことが。そんなこと、伝説にすぎないようなもの
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