う。忘れ得ぬ夜の出来事」
彼女らは声をそろえて笑った。
「何かあったんですか」
と、放二がきくと、駈け戻った子は目をふせて答えなかったが、ほかの一人はノドがムズムズする様子で、しかし直接放二には答えず、同僚に向って、
「あの人、共産党なのかしら?」
「うそよ。はじめはイタズラだったのよ。笑いながらデモ演説のマネしてたのよ。マダムが叱ってから、怒っちゃって、闘争演説はじめたのよ」
「そうでもないようよ」
「そんなことなくッてよ。ただの酔ッ払ッたアゲクよ。だけど、マスター行状記、バクロ演説、痛快だったわ」
「キッピイにとびかかったのね。あのときのマスター、ゴリラだわね。キッピイのクビ両手でつかんで、ふりまわしたのよ。フロアへ叩きつけちゃったわ」
「そのときサブちゃんが飛びだしたのね。ダブルの上衣グッとぬいでね。見栄をきったわね。ただの一撃。それからは入りみだれて、敵味方わかりゃしないのよ。てんやわんや」
「サブちゃん、凄いのよ。女を狙うと、あれですッて。キッピイ、もう捨てられたって話」
話に一段落がついて、一同は口をつぐんだ。要をつくしたのである。あとは放二の質問は一つしかなかった。
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