たにくらべて、ぼくの胸に愛情がこもっているのだから」
長平は返事をしなかった。ウイスキーを青木にさした。
「まア、のめよ」
「そろそろ、帰るとしよう」
「オレがどういう人間であろうと、オレのことが記代子を愛す愛さないの標準になるてえのは、どういうわけだね。君は、まるで落付いていないな」
「だからさ。全然、とりみだしでいるんだよ」
「オレは、まったく、記代子がどうなろうと構わないと思っているよ。君にすてられようと、愛されようと、それで記代子の一生が終るわけではなしね。どっちへどうなろうと、その又次にも、何かがあるものだよ。事がなければ幸せだというわけでもなしさ。亭主が立身しようと、貧乏しようと、そこに女の幸福の鍵があるわけでもなし、さ。幸福の鍵なんてものは、もし有るとすれば、一つしかないものだ。いつも現実の傷を手当てしろ。傷口をできるだけ小さく食いとめ、痛みを早く治せ。それだけの対症療法があるだけさ。君は、何か、手当てについて、考えたり、やってみたり、したかい?」
七
「君は太平楽な人さ」
青木はしみじみ呟いた。
「対症療法だって、人間はみんな患者さ。すくなくとも、
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