をかりて、自分のデスクへもどり、タバコに火をつけた。イスにもたれて、タバコをふかしている。まもなく、むせびはじめた。タバコをすったことがないのである。苦笑して、火をもみつぶした。
「ハイ。あげましょう」
 ピースの箱とライターを青木の方へ投げてよこした。
 青木はかなり窮屈な思いにさせられた。記代子の言葉にこだわったのだ。そして、放二によけいなことを話しかけた。しかし、帰り仕度をするときには、放二を誘うことができなかった。
「ノドにつかえていたようね。放二さんを誘う言葉が」
 記代子はあとでひやかした。
 青木は浮いた気持にもなれなかった。のむビールのにがさが浸みるばかりである。
 酔いがまわると、腹をすえて、
「記代子さんや。長平さんの姪御さんだけのことはあるよ。平凡なお嬢さんのような顔をして、頓狂なカラ騒ぎをやらかす人だ。しかし、とにかく、文学的でありすぎるよ。いかに良き人を思いつめたアゲクにしろさ。痴話喧嘩の果に、ぼくのようなオジイサンを口説くのは、ひどすぎますよ。外国の小説や映画にはありそうだがね。女王だの公爵夫人というようなお方がさ。王様だの公爵と痴話喧嘩のあげくに、奴隷だの
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