えてしまうわね」
「意気投合していらせられるか」
青木は苦笑して、ねころんだ。
「パンパン宿というものは、威儀を正して坐っていられない気分になるものらしいや。御免蒙って、失敬しますぜ。ところで、長さんや。重ねて、おききしますが、記代子さんの病室を見舞う必要はないのですか」
「先方が会いたがってもいなかろうよ」
「なるほど。しかし、なんとか、してあげる必要はないかねえ」
「君自身が何かの必要を痛感しているらしいな。ぼくに何をやらせようというのかね」
「君自身には、ないのか」
「ない。記代子がぼくを必要とするまでは。どうも、君は、妙にひねくれて、考えているね」
「そうかい」
青木は素直に考えこんだ。理窟は、たしかに、そうでもある。しかし、これでは、隣人というものが助からない。
「なア。長さんや。記代子さんの放浪、恋愛、愛人の裏切り、輪姦、脱走、病気。よくもまア、これだけの困ったことを、たった一人で引きうけたものさ。隣人は不幸を分ちあうものさ。君は彼女の死んだ父母に代るべき最も近い肉親ですよ。最大の隣人ですよ。君が何かをしてやらなくて、誰が彼女の再生の支えとなる者があるのかね。え?」
青木は改まって、起き上らずにいられなかったが、それが一そう長平に不興を与えたようであった。
「記代子にまかしておきたまえ」
長平はソッポをむいで、つめたく答えた。
五
青木は長平の顔を見るのも不快な気がした。いつもながら、思いあがった冷めたさである。
理窟を云えばキリがない。どんな非行も、理窟で筋を立てることはできるものだ。
やりきれないのは、長平という男の独善的な暮しぶりだ。行い澄ました偽善者の方が、まだ、どれぐらい可愛いいか分らない。姪の病室を見舞いもしないで、パンパン宿でノウノウとしている悪どさ。その暮しぶりの独善的な構図が、あくまで逆説的だから、鼻もちならぬ毒気に当てられて、やりきれなくなってしまう。
たかが小娘のパンパンを心の友であるかのように、一ぱし深処に徹して契りを結んでいるかのような、平静や落付きも、やりきれない。思いあがっている、という一語に全てがつきている。
生活に不安のない人間が、彼によりすがる人々を突き放して勝手に安定するぐらい、容易なことはないのである。要するに、利己主義という一番平易な一語につきる。
青木はつい皮肉の一つも言わ
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