とりごと」のやうなものは、私は人に見せないで、隠しておきたいと思ふ。私だつたら、とみゑさんの遺言通り焼きすてる。
「ひとりごと」だの「薔薇は生きてる」などを愛読する人はきつと「善人」なのだと私は思ふ。自分を厭がつたことがなく、汚らしがつたことがなく、人まかせにのんびり暮してゐるから、悪人の悪相が汚らしくも厭でもなく、面白かつたり、珍しかつたり、うがつてゐたり、たのしいのだらう。だが、こんなものは本当の文学ではない。たゞの薄汚いアブク、テンカンのアブクみたいなものだと私は思つてゐるだけだ。



底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
   1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「雑談 第一巻第五号」白鴎社
   1946(昭和21)年9月1日発行
初出:「雑談 第一巻第五号」白鴎社
   1946(昭和21)年9月1日発行
入力:tatsuki
校正:宮元淳一
2006年5月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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