ていることを認めざるを得ないのである。したがって、漁師の体格は健全とは云われない。寒天に於ても水中に作業する勤労の性質から、豪快であると共に不健康でもあり、たとえば戦争する兵士のように、生活全般がむしろ病的傾向を帯びているのである。
 こんなわけで、漁師町でも、温泉町の人々と同じぐらい医薬が必要でもあるのである。したがって、一人の漁師――烏賊虎さんが、一人の医師に深いツナガリをもつに至るのもフシギではない。
 烏賊虎さんは赤城風雨先生を信仰していた。それは医者と患者のツナガリをこえ、人格的な讃美カツゴウに到達していたものであるが、それは友人Qに於ても同じことであったろう。
「赤城先生には、こんな患者がたくさんいました。つまり、信者です。まったく人格によるものでして、中には、先生のミタテはダメだが、お人柄が忘れられないなどゝいう信者もいました。これでは先生も浮かばれません。だいたい医者が、医学上の識見でなくて、人格上の崇敬をうけるなどということは、本人にとって満足なことではありません。別して赤城先生はそうでした。医学者としてのほかには、なんの野心もないお方ですから、私のような信者はアリガ
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