。面白かったです。結局、狂六先生が、最も純情の如くで、最もずるいですね。自分がどうするということを言わずに、並木先生が一服もり、玄斎先生が夜更けに一刀両断にしたら、と云ったのです」
これだけで済めばよかったのだが、それから間もなく一作氏が原因不明の病気になってフラフラと床についてしまった。そこで貞女花子夫人が立腹して、並木先生の立入り禁止を発令し、よそから医者をよんだのだ。
この報告がてら、光一は三先生を訪れて、真実を伝える喜びに於て、事のテンマツをチク一打ち開けて語った。そして、三先生を慰める意味に於てか、真実を伝える喜びに於てか、次のように話を結んだ。
「要するに、彼女は今のところは貞女です。貞女そのものですね。自己の本態についてはあくまで無自覚ですからね。要するに、それだけですよ。これからがタノシミだと仰有《おっしゃ》るのですか。ハッハ。イヤなお方だ」
ヤブヘビの巻
並木先生が前山家の出入り禁止をうけることは、一軒のオトクイを失うという意味だけでは済まないのである。
並木病院の建物は前山家のものだ。前山家の先代はゼンソクその他の持病に難渋していたために、並木
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