い。まア、誰が犯人でもいいけどね。次に、財産を独占するために、ボクを殺しさえしなければね」
「お互い様よ。遺産を独占するために、私を殺すのだけは止してちょうだいね」
「お互いに、それは止しましょう」
そして、兄と妹は口をつぐんで右と左に別れたのであった。要するに、誰が犯人だか、見当がつかないらしい。そして、要するに、誰が犯人でもかまわないような変テコリンに無関心な時世が到来したらしいのである。戦争という大殺人の近づく気配が身にせまっているせいかも知れない。シリメツレツは今や全ての物についてそうであるのかも知れない。
底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房
1999(平成11)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「別冊小説新潮 第七巻第一二号」
1953(昭和28)年9月15日発行
初出:「別冊小説新潮 第七巻第一二号」
1953(昭和28)年9月15日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2009年4月18日作成
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