最善をなしたいという善意と努力は忘れないつもりだ。
 私は自分を省て、選者たる資格はあると思ったのだ。選者をひきうけるとき、考えたあげく、自信を得て、やることにした。私が人のためにつくせるものは、それぐらいだ、という自信によって。
 私としては、よくつとめている方である。私のようなナマケモノが、むかしは、もらった同人雑誌など、頁をめくったこともなかったのに、今では、一応、たいがい目を通しているのだもの。ほかでもない。私が人のためにつくしてあげられるのは、ただ、それぐらいのことだけだから。
 まったくのところ、私が社会人として、責任をつくしているのは、それだけだよ。税金もおさめなければ、選挙にも行きやしない。



底本:「坂口安吾全集 09」筑摩書房
   1998(平成10)年10月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潮 第四七巻第八号」
   1950(昭和25)年8月1日発行
初出:「新潮 第四七巻第八号」
   1950(昭和25)年8月1日発行
入力:tatsuki
校正:花田泰治郎
2006年3月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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