、月日のたつうちに、アキ子は時々外泊して、度重なるようになった。
 学生たちは平気なもので、アキ子のところへ遊びにくるのである。
「昨日は奥さん、誰々のところへ、泊られたんですよ」
 と、あたりまえの顔でいう。
「僕は、ふられちゃったなア。僕とこへ、いらっしゃい、と言うのにアイツのとこへ行くんだもの。アイツ、僕よりハンサムじゃないけどなア」
 と相好くずして、ゲタゲタ笑う。
 要するにバカではあるが、決して悪人ではないらしい。アキ子は、アラ、邪推深いわね。あなたが大人だからよ。あなたの心が汚いから汚く見るのよ。子供達は純心よ、と云う。すると、大学生も、先生、ひどいなア。奥さんをいじめたそうですね。先生は大人だから、そんな風に考えるんだな。僕たち、そんなこと、考えたことないけどなア。ズケズケと言う。ニヤニヤしながら言うのであるが、ヌケヌケという感じじゃない。どうしても低脳という感じであった。
 然し、先生も、ついに怒った。自宅へ遊びに来た三人の大学生を、表へ、ひきだして、だしぬけに、なぐり、蹴った。先生は生れて以来鉄拳をふるったのは始めてだが、さいわい、相手の学生がだらしなくノサレて、三
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