囲碁修業
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)隠岐《おき》和一の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)(一)[#「(一)」は縦中横]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)だん/\
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(一)[#「(一)」は縦中横]
京都の伏見稲荷の近辺に上田食堂といふのがある。京阪電車の「稲荷」といふ停留場の西側出口に立つと、簡易食堂、定食十銭と書いて、露路の奥を指してゐる看板が見える。去年の秋から、その下へ、囲碁倶楽部といふ看板がふえた。僕が京都へ残して来た仕業である。看板の指し示す袋小路のどん底に、白昼もまつくらな簡易食堂があり、その二階が碁会所だつた。
書きかけの長篇小説の原稿をふところに入れて、僕が京都へ行つたのは、去年の一月末日だつた。始め隠岐《おき》和一の嵐山の別宅へ行つたが、のち、隠岐の探してくれた伏見のしもたやの二階へ移つた。ここへ弁当の仕出しをしてくれたのが上田食堂で、やがて食堂の二階に空室があるからと云ふので、これは好都合とそこへ移つた。
そのころ僕は田舎初
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