いうと、とにかく商売だけだ、ということだけはハッキリ云えます。
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死刑囚の閑日月と云うような妙テコリンの写真から、とにかく、こういう判断を下した桜井さんは、相当健康で合理的な判断力がある方で、神がかりや邪教的な要素が少い文化易者と見立てることができよう。
文春記者の語るところによると(今きいたのだが)桜井さんは本人に会って声をきくと判断し易いと云って、写真だけではうまく出来ない理由としたそうだ。
声をきいてみたい、というのは、たしかにその通りだろうと思う。私も声や声によって現される言葉には、その人間が現在位置している場所、つまり、職業とか身分地位というようなものを綜合的によく具現しているに相違ないからである。声にはその人間の確信も信念もこもるものだし、その声を分類し、声の裏にかくされたものや、言葉の意味が彼の心からどの程度の軽重さで発せられたかも分るものだし、それは私たちだって、桜井さんと同じように相手の声を読むものです。
若い青年の議論が、どの程度彼の身についたものかは、声で一番よく分るものです。どの程度の信念か、それも分る。まア、私たちには私たちだ
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