にも亭主関白の超論理で女房側の正論を屈服させ、封じこめておくことができる。自分に生活能力がなくなって女房を働きにだしてしまえば、女房は家庭の超論理から解放されて、自分の論理をうるのは当然ですよ。
だから亭主関白の論理の現状に於て、生活に困って女房を働きにだすということは、家庭の破滅の決定的なモトをなすものですよ。おまけに亭主関白の側から云わせると、亭主が困った時には、女房が働いて亭主につくすのが当然だというような考えもあるから、尚いけない。のみならず、女房が世間へでて働いてみると、家庭生活がいかに暗くてツマラナイものか、それがハッキリ分るのが尚いけない。特に彼女の現下の家庭というものは彼女のヤセ腕にすがるような暗い惨めな生活であるから、世間にでて働くたのしさや面白さが身にしみるでしょうね。
ちょッと考えてみれば、分りすぎるぐらいよく分ることですよ。日本の家庭感情の現状に於ては、生活に窮すれば窮するほど男はわが一人の腕で一家を支え、亭主関白たる貫禄を実力的に保持するために全心全霊をあげて悪戦苦闘すべきであって、コンリンザイ生活のために女房を働かせてはなりません。
むしろ、生活苦のた
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