なる論理について云ってるのです。
編輯部から持ってきた今月の出来事の中で、一ツ、こんなのがありました。結婚以来三十年という老夫婦、二人の息子が二十九、二十四という大人になってる家庭で、父に金ができたら女遊びをはじめて愛人ができた。母に同情した息子が父を責めてポカポカぶん殴ったので、父は家を出て愛人のところで生活するようになった。息子はそこへも押しかけて行って父を十五か十六ぐらいポカポカぶんなぐったそうだが、息子の後援で母の方から離婚訴訟を起したという事件です。この訴訟を起した直接の原因は家出した父が養子を探しているのを探知した母と息子方の方が、このまま放置しておくと財産を養子にとられる怖れがあって、こうなったものらしい。
こういうように、実の息子が父の頭をポカポカ十五か十六もなぐるような暴力沙汰に及んで、もはや父と子の和解の道は得られない状態になっても、ここには財産というものがあるために、裁判によって解決の道が得られます。息子がオヤジを十五も十六もぶんなぐっても一家心中ムリ心中、オヤジ殺しなどに至らないのは、財産があって、それが愛憎を適当に解決してくれる見込みがあるからですね。
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