安吾人生案内
その四 人形の家
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)女礼《メレイ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)夜|寝《やす》む
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ポロ/\
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人形をだく婦人の話 高木貴与子(卅四歳)
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女礼《メレイ》チャン(六ツ)の事でございますか、動機と申しましても、さあ他人《ひと》はよく最愛の子供を亡くしたとか、失恋して愛情の倚《よ》りどころを人形に托したと御想像になりますが、これといって特別な訳があるのではございません。丁度終戦直後、人形界の権威といわれる有坂東太郎先生について人形つくりを始めてから半年程してお嬢さんを亡くした知り合の方が、廿年前からあったこの女礼を下さったのです。その頃から、此のお人形は私の処へ来る為にあったのだ、神様が授けて下さった、とまあ只のお人形という気がしなかったのです。源氏物語の中にも見えて居りますように、
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