拝見致して居りましたので、貴方様なら取ついで戴けそうに思い、不躾けと知りながら、厚かましくも、お願いする次第です。
“安吾巷談”を受売りした為に、罰金千円の刑に処せられる結果になったと言う私の、農村での笑えぬ喜劇をお知せします。
それは昨年の今頃、当地に地方事務所の社会教育委員が来られて、青年団員と、村の有志を集めて座談会を持ったことが有ります。其の席で村の有志の一人が“村の発展は青年の犠牲的精神[#「犠牲的精神」に傍点]の発揮の外はない”と言う様なことを発言、皆がそれに賛成されたので私が、“今までは国の為、天皇の為の犠牲、今度は村の為の犠牲か、もう我々青年は犠牲なんていう事は真っ平だ”と発言した処がさあ大変、“今まで天皇様は国民に犠牲を求めたことはない、それは暴言だ、取り消せ”とか何んとか、幾人もの天皇護持者連中にまくしたてられたので、私は浜口さんの“野坂中尉と中西伍長”よりの天皇制問題の処をあの儘受売り、ついでにガンジー流の無抵抗主義より再軍備反対論にまで発展させて論争を終えて帰えったが、翌日になって見たらこのことが村中に尾ひれがついて広まり、“小山田は天皇様を馬鹿と言った、どう
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