っています。ジミーとは、もう別れられないのではないかという気もするんですが……
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 無智な親が気付かずに娘の家出のお手伝いをしていた話である。東京に働いている娘が毎日八時までに鎌倉に帰らねばならぬとは、ムリな話だ。それほど心配なら首にクサリをつけて、つないでおくに限るな。映画ぐらい見たいのは当り前だし、娘が一人前になって働きにでた以上は、恋愛するのが当然と心得、よき恋愛をするように協力した方が策を得ていたであろう。協力してもマチガイは起きがちではあるが、マチガイに罪悪感をいだかせず、再びその愚をくり返さぬイマシメとして役に立つことができれば、それは一つの人間の進歩で、それでも結構なことである。第一話でも述べたように、少年少女というものは、大人の門が眼前にあっても、そう軽率にくぐりはしないものだ。子供の自発的なブレーキに理解がなく、徒《いたずら》にシツケの厳格を誇るのは手前勝手で、子供が反逆して事を起すに至っても、自分がお手伝いしていたことには気付かず、親の義務をつくしたことを確信しているのが多いらしい。
 十時に帰って来た娘を締めだして、戸を叩いても中へ入れず
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