を失うところであった。
大判の詩集でした。ちょうど「アサヒグラフ」ぐらいの大きさだったと記憶するが、左の片隅にチョボ/\と詩がのってると思うと、突如として右下に、字が大きくなったり小さくなったり、とんだり、はねたり、ひッくりかえッたり。弟子のポール・ヴァレリー師は、マラルメ師は言葉の魔術使であると言っているが、言葉の魔術とはこういうことを言うのかなア。これは印刷の奇術ではあるが言葉には関係がない。まして詩の本質に関係ありとは思われないのである。
マラルメ師を第一代の教祖とする。ヴァレリー師を二代目、三代目は日本にも優秀なる高弟が一人いて小林秀雄師、これがフランス象徴派三代の教祖直伝の血統なのである。
私も二十三年前には大そう驚いて、これが分らないのは私に学が足らないせいだ、大いに学んで会得しなければならん、というので、教祖の公案を見破るために奮闘努力したのである。
ヴァレリー師は教祖マラルメ師について、かなり多くのことを語っている。私はそれを飜訳したこともあった。この中で、今もって私の腑に落ちないことが、一つある。自分で飜訳しておいて腑に落ちないとは失礼な話であるが、元々学がな
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