一人は三分の一だけ吸い、残りをうやうやしく紙にくるんで胸のポケットへ大事にしまいこんでしまった。拒諾いずれにしても沈々として妖気がこもってることに変りはない。
日本のストリップショオの見物人を家族的にうちとけさせるのは実に一大難事業であるというのが彼氏の結論であるが、これも、一方的な、手前勝手な言い分なのである。
踊り子が生きとらんじゃないか。彼女は踊り子ではなくて、生の裸体にすぎんじゃないか。沈々として妖気ただよう見物人と全く同質の単なる肉体にすぎないのである。
肉体がタバコをすって、ギコチないモーションで口紅だらけのタバコをつきだせば、誰だってギョッとすらあ。これにスマートな応対をしてくれたって、ムリのムリですよ。
お客をうちとけさせるには明るく軽快でなければならず、これも芸を必要とする。芸なし猿が口紅だらけのタバコの吸いさしを突きだすなどゝは、アイクチを突きだすぐらい穏かならぬ怪事としるべし。生き生きとした笑顔ひとつ出来ないというデクノボーのような肉塊にすぎないのだもの。
見物人にインネンをつけるよりも、踊り子の芸を考えてみることである。
先般、文藝春秋だかに、メリー
前へ
次へ
全20ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング