は、私の顔を見るたびに、
「もうける雑誌、もうける雑誌」
 と意気ごんでみせ、たちまち大モウケしてみせるようなことを言うようになったが、実際は、アッと言わせるのはカンタンだが、もうけるのは大事業なのである。
 このH編輯長がなんとか組のなんとか氏とカンタン相てらしたと称し、兄弟の盟約をむすび、兄貴、わるいところがあったら、だまってオレの頭をなぐれ、などゝオイオイ泣き、こういう低脳がでゝくると、もうダメである。なんとか組のなんとか氏はH氏にくらべてはもっと大人で、そうバカではなかったらしいが、間にH編輯長という低脳で神経質で被害妄想のようなのがはさまっていて、それを通じての話をきいているから、まるで敵地へのりこむように出社して社員をどなりつけた。
 ここの社員は主としてO氏の弟子に当る若い連中で、O氏の一族ではあるが、私とは何のユカリもない連中であった。けれども、H編輯長もO氏の選んだ人物、なんとか組のなんとか氏もO氏のたのみで金をだした人物で、O氏の知人であるから、H氏やなんとか氏への不満をO氏のところへ持っていっても、とりあげてくれない。そこで私のところへ泣きついてきた。
 吉井君も
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