きいたホテルができて、簡単にヒルネを解決してくれるだろうから、ヒルネに困りもしなかろうと思う。
 どういうわけで熱海の糸川があれほど名を売ったか知らないが、実質はきわめてつまらぬ天下どこにも有りふれた公娼街にすぎないのである。地域的にも小さくて、むしろ伊東のパンパン街が大きい。
 糸川がいくらかでも、よそと違うとすれば、女と寝床のほかに、温泉がついてるだけだ。小さな、陰気な浴室が。
 こんな有りふれたつまらぬものでも、それで名が通ってしまえば、やっぱり熱海の一つの大きな看板だ。熱海市のお歴々が、熱海の復興は糸川から、と、今さらいと真剣に考えはじめ、しかめつらしい顔をそろえてパンパン街の復興の尻押しに乗りだしたからといって、笑うわけにいかない。
 温泉都市の性格が、今のところは、そういうものなのだから、仕方がないのだ。名物をつくるというのが大切なことで、温泉都市の賑いは、その名物に依存せざるを得ないのである。
 熱海市は大通りを全部鉄筋コンクリートにさせるというが、これも狙いは正しく、すくなくとも熱海銀座はそのように復活することによって、一つの名物となりうるであろうが、それはいつのことだ
前へ 次へ
全39ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング